転院に介護タクシーを利用したときのこと

kaigo-taxi22私が初めて介護タクシーというものを利用したのは4年前、母の転院のときでした。脳卒中で倒れた母は救急病院に運ばれ、そこに一カ月余り入院していました。救急病院ですから症状が落ち着いたら別の病院に転院しなければなりません。駆けずりまわって転院先を探し、やっとのことで転院が決まったのは3月も終わりのことでした。

 容態が落ち着いたとはいえ、脳卒中の後遺症は重く、当時の母は歩くどころか起き上がることもできませんでした。転院といってもどうすればいいのだろうと思いました。普通の車に乗せられる状態ではありえませんし、救急車も出せないと言われました。
 そこで介護タクシーを使うことになりました。地元の介護タクシー会社を選び、事情を説明すると
「ではストレッチャーをお使いになりますか?」
 と言われお願いすることになりました。
 転院当日の朝、看護師さんと運転手さんが母をベッドからストレッチャーに移乗してくれました。ちょっと不安そうな顔をする母に、運転手さんは「大丈夫ですよ」と優しく話かけてくださいました。
 その日は良く晴れて、うららかな春の陽気でした。介護タクシーは満開の桜の下を走りました。
「見えますか、桜。きれいでしょう?」
 運転手さんは走りながらも母に話しかけてくれました。あとで気づいたことですが、桜のきれいな道を選んで通ってくれたのでした。
 無事に病院に到着し、お別れの際にも運転手さんは
「お大事に、早くよくなってくださいね」
 と言ってくださいました。ちょっとした触れ合いでしたが、とても温かな感情が残り、これからも頑張ろうと思いました。