経営者の苦悩

20130125_366494理論に無知だった自分にショックをうけた経営者本田宗一郎
「学問は学問、商売は商売とわりきっている人もいる。しかし学問が根底にない商売は一種の投機事業みたいなものでしかなく、真の商売は不可能といえないだろうか。
骨身に応えた自分の基礎の薄弱さ、後悔した体験が強くそのことを悟らせたのであった」
宗一郎は理屈だけの学問や肩書だけの大学を忌み嫌ったが、学問や大学そのものを嫌ったのではなかった。
まだ戦前のこと、宗一郎がトヨタに納品する部品メーカーを経営していたころだ。
ピストンリング(エンジンのピストン上部の気密を保持し滑らかにピストン運動をさせる機能をもった重要な自動車部品)に装着する鋳物をつくろうとしたときに、さすがの彼がやってもうまくいかなかった。
それで、鋳物専門の工場に相談に行ったがそれがまたダメで思い余って、あまりあてにはせずに浜松高工の先生を訪いねたことがある。
するとその先生は、しばらく預かって分析した上で、シリコンが足らないからだ」
と指摘した。
「シリコンて?」
「そのへんの石ころに入っているものさ」
彼は、
「世の中には経験ではわからないものがあるI・」
と大変なショックを受けた。これまで軽く見ていた理論の大切さを実感した彼は、さっそく浜松高工機械科(現、静岡大学工学部) の特別聴講生として入学した。
50人の従業員を抱えた30歳の学生だった。
学生帽に学生服でこの学生生活はけっこう気に大ったらしいが、好きで役立ちそうな授業以外は見向きもせず、ノートも取らず、試験も受けなかった姿勢は、基本的には小学生のときと同様だった。

経営者は時に紳士に学ぶ姿勢も大事なのである。